《MUMEI》
勘違い&式夜の答え
コッコッ
ノックの音が聞こえた。
はっとした様子で壁にかかった時計を見上げる彩詩。時刻は6時40分を過ぎたあたり。
「やっば!!」
ごしごしと顔を拭きドアを開ける。
「失礼します。主人・・部屋は綺麗にと何度言えば分かってくださるのです・・」
無表情な式夜がドアの前に立っていた。
「いや・・あの・・えっとね〜・・」
あたふたと言い訳を考えている様子の彩詩の顔を見て何かに気が付いたように表情が固まった。
即座に部屋へと入り、狩月を発見、刃を抜くのも見せず喉元へ突きつける。
「貴様、彩に何をした!!」
試合会場とは正反対の感情もあらわな怒鳴り声。完全にキレている。
その気配に圧倒され何も言えない狩月。さらに声を上げる式夜。
「何をしたと聞いている!!」
「式夜ストップ!落ち着いて。」
狩月と式夜の間に刃をどけながら入り仲裁をする彩詩。
「彩、どいて!この男を斬り捨てるから・・彩を泣かせた奴は絶対に許さない!!」
狩月を睨みながら声を荒げる。
ゴツン!
彩詩が式夜の頭を殴った。
「落ち着きなって。これは、眼にゴミが入ったの!解った?」
ビシッと指を突きつけ断言する彩詩。
「けど・・彩・・」
「ゴミが入ったの。わ・か・っ・た?」
うむを言わせぬ笑顔を向ける。
「眼にゴミが入るのは片づけをしていないからです。主人が言ってくだされば私が片付けます。」
刃を鞘へ戻しながらつぶやく。口調は冷静だが、頬は先ほどの名残で赤くなっていたりする。
「でもさ〜自分の部屋だし・・人に片付けてもらうのも悪いかな〜って思ったりするんだよね。」
やれやれ、と肩を落とす式夜。
「そうだ。折角だし式夜にも聞いとく。二つのうち一つしか護れないとしたらどっちを選ぶ?」
話題を逸す為にそう尋ねる。
「主人・・その二つを明確に定義して頂かないと答えようが無いと思います。」
冷静に突っ込む式夜。いつもの無表情に戻っている。しばらくの沈黙・・
「教会の偉い人と、友達だったら?」
「私に友はいません。」
即答。あきれたように言葉を続ける。
「じゃぁ・・偉い人と知らない人なら?」
「貴女が守れと命じた方を護ります。」
さらに即答。

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