《MUMEI》 「猿だな。」 「うっせぇ! 颯ちゃんの家が登り易いだけたい!!」 「人の家を木みたいに言うな! ほら、早く靴脱いで上がって来いよ。」 「おう!」 賢ちゃんは満足そうに微笑むと、 俺の部屋に入り込んだ。 そして、図々しくもベッドの中心に胡座をかいて座る。 「で、何のようだ?」 「ん? 颯ちゃんの顔見に来たんのやん。」 「は? 今朝会ったばっかだろ?」 「ああ、そやけど電話もらってん。 蓮翔ちゃんから。」 「え?蓮翔ちゃんから?」 「うん。 なんかあんな蓮翔ちゃん初めてやったぜ?」 「どっか具合悪いのか?」 そこまで言うと、 賢ちゃんが盛大なため息をついた。 「ホント、颯ちゃんも鈍いなぁ。」 「??」 「蓮翔ちゃんはな、お前のこと心配したってんねんぞ!!」 「俺?」 「そうや。 そやけどな、俺は颯ちゃんの力になれへんかってん言うてな? 落ち込んどったけん、変わりに俺が様子見たろー思って来たと!!」 「別に俺は大丈夫だから。」 「ホンマに?」 「ああ、ホンマ。」 「なんだ! そりゃあ良かったー!!」 こいつら……。 御礼を言おうと口を開き書けたのだが、 次に言った賢ちゃんの言葉にやめた。 「颯ちゃん暴走してるんか思うて、 結構ウキウキしながら来たんやけどなー!」 前へ |次へ |
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