《MUMEI》

「だから、ね?」

「──はい、畏まりました。以後気を付け‥」

「大丈夫だよ、そんなに気を遣わなくても」

「いえ、僕はアンリ様の執──」

「それと──」

僕の耳元で囁くように言い、

「──でしょ?」

にっこりと微笑むアンリ様。

「ね?」

「──はい」

「じゃあ、お散歩行かない?」

「御散歩──」

「ね?」

「──はい。では、今コートを御持ちしますね」

僕は、ラックにコート類を取りに向かいました。

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