《MUMEI》 「え?」 「俺、血流したこと無い。」 「や、それは怪我したこと無いからやろ??」 「父さんに殴られた時、血、流さなかった。」 「そ、そりゃあ。 掠り傷やないんやし、 血は流さんわ。」 颯ちゃん! お前どうしたん!! 「人の痛みも分からない……。」 「わかるっ! 何言うてんねん!!」 「………。」 「人の痛みが分かったらなあ、 分かろうとしたらなあ!! 涙が出んねん!! 痛みを分かち合おうとして、 涙がでんねや!!!」 泣いていた。 余りの颯ちゃんの傷付きように。 颯ちゃんの心は泣いていた。 悲鳴を上げていた。 挙句の果てに、 自分は人間じゃないと思うまでに。 ただ、特別な存在だと、分かりもしないくせに。 決めこんじまった。 「……っ……っ……。」 沈黙の中、 俺の呻き声だけが響いていた。 前へ |次へ |
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