《MUMEI》

「‥‥‥‥‥‥‥」

 雛菊は独り、部屋でぼうっとしていた。

(何故私を置いていくのだ‥?)

 得に出掛けたかった訳ではないのだが、置いて行かれるというのは些かいい気分ではない。

「つまらんな‥」

 居れば煩いと思うのだが、いなければ何か物足りない。

「‥ぁ」

 二階の部屋からは、下の道を往来する商人やら踊り子の姿がよく見える。

「楽しげだな──‥皆‥」

「おー、何だやっぱ起きてたかぁ」

「‥──草」

「ほいっ」

「‥!? 馬鹿者っ、危ないでは無いかっ。いちいち投げて寄越すなっ」

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