《MUMEI》 亀裂「……出て行け。」 「……え?」 「お前は人間だ。 だから……出てけよ。」 「え……な…に…言ってるんだよ。」 「アンタは……人間だ!! 俺は人間じゃ無いんだ。 もう二度と俺に関わるな!!」 「は? 颯ちゃ……」 「そのあだ名で二度と俺を呼ぶな!! この一般人が!!!」 イカれてる。 颯ちゃん、イカれてるよ。 「お前は涙を流している。 だから…お前は人間だ。 俺と……違う。」 どうしたんだよ。 今朝と態度が随分違うやんか。 今までの間に何があったん? なあ、颯ちゃん!! 俺は、心の中でそう叫ぶと、 慎重に窓から外へ出た。 靴を履いて、 サッカーボールを手にした途端に窓を閉められる。 その時の颯ちゃんの顔を見て、 背筋が寒くなった。 何故なら……。 表情がなかったんだ。 颯ちゃんの顔に何一つ、 喜怒哀楽が伺えなかったんだ。 その顔は“無”と呼ぶに相応しかった。 恐ろしい程無機質で、 もうあの時の颯ちゃんじゃないんだって、 嫌でも思い知らされた。 前へ |次へ |
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