《MUMEI》

わたしは 森に 住んでいる 
生れつき 目が 見えない わたしは 木の下に 落ちていたらしい

わたしを 育ててくれた ヒトは とてもものしりで 優しい
見えない わたしの 大きさに 合わせて 誕生日になると(このばあい、 わたしが そのヒトと会った日)
キレイな もようの 杖を 作ってくれる

見えない わたしの代わりに 本を 読んでくれたり 

上手く 歌えない そのヒトの 代わりに 歌ってあげたり
とても 二人で いると おだやかに なれる

ある日、
『きみは ぼくとは チガウから いつか 近くの きみと 同じ カタチの ところに 帰るんだよ』

と、私に 言った。

『どうして? わたしたちは いつも いっしょ だったじゃない わたしを 一人に しないで』

『まだ わからないだろうけれど、 きみは 一人 じゃないんだよ』

『あなたと いっしょじゃなきゃ いやだ』

『だって きみは ステキな 声だし、 体も くさくないもの 笑うとき 口は 耳まで 裂けないだろう? ヒトは ぼくのことを バケモノって 呼ぶんだよ。』

そう言いながら かなしげな 顔を(声が そうだった) した


『いつも 静かに 本を 読んで くれるじゃない 
ニオイは いい香りの 花を すりこめば いいのだわ 
あなたの 口は カッコイイ じゃない
わたしも あなたも ヒトだわ
だって あなたは こんなに 優しいもの』

その ヒトは、 ありがとう と言った
何故か さびしげ だった

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