《MUMEI》 俺は涙を流さない。 血を流さない。 痛みが分からない。 そう。 だから………。 俺は人間じゃない。 心に残っていた、何かモヤモヤしたものが、 一気に吐き出されたような気がした。 すっきりした。 だから、俺の判断は正しかったのだ。 そろそろ日が傾いて来ている。 もう練習の時間だ。 俺は直ぐさまジャージ姿になると、 リビングへ向かって行った。 リビングでは、既に支度を整えた父さんが、 俺を待っていたようだった。 「話しがある。」 それだけ言うと、 父さんと向かい側に置かれているソファーを顎で示す。 「はい。」 俺は素直に従った。 「今回のことだが……。」 「はい……。」 「大目に見てやる。」 「ありがとうございます。」 「ああ、ただし条件がある。」 「はい。」 この身に何が起きようと、どうでも良かった。 俺なら全てこなせる。 だって俺は、 人間じゃ無いのだから……。 前へ |次へ |
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