《MUMEI》

「風が──‥出てきましたね」

丘の上は見晴らしが良く、居心地もとても良いのですが──

「ちょっと寒いね」

「そうですね──」

風が出て来た為、空気が冷えてきたように感じます。

コートを脱いで、肩から掛けて差し上げると、アンリ様がその半分を広げて、入るよう仰られたので、少し驚きました。

「ほら、風邪引いちゃうよ?」

「‥ぁ‥、はい」

「ねぇ、夕陽──見れるかな」

「はい、きっと」

「──手、握っていい?」

「はい、どうぞ」

答えると同時に、小さな両手が僕の左手を握り締めてきました。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫