《MUMEI》

「退屈──なされませんか」

「うん、楽しいよ。お空見るのって好きなの」

「左様でございますか」

「リュートは眩しい‥?」

「いえ、昼間の明るさにも──だいぶ慣れてきました」

以前は夜しか行動しなかったのですが、半分人間になってからはこうして昼間外に出る事も当たり前のようになってきているんです。

「──夢‥みたいだよね」

「‥?」

「夢みたい」

「そうですね──」

僕は、この御方に御会いするまで、人間を好きになるなどという事は考えた事もありませんでした。

ヴァンパイアにしてみれば、人間は只、獣から見た獲物のような存在。僕は、そうとしか思っていなかったから──。

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