《MUMEI》

 その夜、二人は薄い布団に身を横たえて眠り込んでいた。

「‥‥‥‥‥‥?」

 ふと目が覚め、雛菊はのそりと体を起こす。

 そして、何やら妙な音がする事に気付いた。

(何だ‥?)

 廊下の方から、何やら爆ぜるような音。

 雛菊は咄嗟に、障子を開けた。

「‥‥‥‥っ!?」

 煙だ。

 それだけではない。

「‥火‥」

 目の前には、火の海。

「っ‥」

(何故‥こんな‥‥)

 雛菊はふと、小火があったらしいと翁が言っていたのを思い出す。

(‥まさか‥)

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