《MUMEI》 「──アンリさ‥」 言い掛けた僕の言葉を遮るように、微笑みかけられたアンリ様。 「分かった?」 「──はい、アンリ様」 握られた手が熱っぽくなる事にも少し慣れ始めて、ただ幸せな夢を見ているような感覚に、僕は浸り切っていました。 「リュート」 「は、はい‥?」「ほらっ、夕焼け──」 「‥ぁ‥」 本当です──。 「──綺麗ですね」 「うん」 アンリ様は目を細めて、染まっていく空を眺めてらっしゃいます。 「───────」 「御楽しみ──頂けましたか」 「うん、楽しかったよ」 「──それは何よりです」 アンリ様の笑顔を、僕は本当に嬉しく思いました。 前へ |次へ |
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