《MUMEI》 しかし、突然その声は甲高い叫び声に変わった。 ユウゴは思わず起き上がり、低いトンネルの天井に頭を打ちつけてしまった。 「……いってぇ」 頭に手をやりながらそっとトンネルから顔だけを覗かせる。 尋常ではない叫び声に、眠っていたホームレスたちも起き上がって、互いに顔を見合わせている。 ユウゴは音をたてないようにトンネルから抜け出した。 そして公園の出入口に目をやると、複数の人影がうろついているのが見えた。 それが追撃隊なのかどうか、よくわからない。 「もう見つかったのか……?」 小さく呟きながら、ユウゴはそっと反対側の出入口へと歩き出す。 公園の土を踏む音が近づいてきているような気がする。 ユウゴは足を速め、公園から出ようとした。 その時「止まれ!」と声が響いた。 反射的に振り向いたユウゴの目に、何かを手に構えた男たちの姿が映る。 ユウゴは一気に走り出した。 キョトンとした顔をしたホームレスたちの横を走り抜け、公園から歩道へ出る。 そして左右に延びる道を右へ向けて走り出す。 すると、少し先の外灯の下に何かが地面に横たわっているのが見えた。 走るうちに近づいてきたそれは、三人の人間だった。 折り重なるように倒れた男三人の周りに、血溜まりがある。 ユウゴはその横を走り抜ける瞬間、仰向けに倒れた一人の顔を見た。 前へ |次へ |
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