《MUMEI》
本音・・墓地での誓い
「も〜これでどう、私と枢機卿なら?命令は無しでね。」
「考える必要がありませんね。貴女が枢機卿を守れと言われたとしても、主人が危険なら主人の側にいます。」
もっとも時間稼ぎ程度しかできませんが・・そう悔しそうに呟いていたがきっぱりと迷い無く答える。
「命令違反を公言されても困るんだケド・・でも、嬉しい。それにうらやましいな。」
苦笑を浮かべながら、話す。
「そんなことはありません。ただ・・自分勝手なだけです。それに、私の場合は「護る」では無いんです。
貴女や騎士団を失うのが怖いだけで、私にとって剣を振るう理由は・・主人が、彩が居なくなることが自分にとって一番怖いからで、つまりは、自分自身のために剣を振るう・・護っているのは自分のことだけなんです。」
淡々と述べていく。だが、彩詩のことを言い換えて言っていることがその言葉の真剣さを物語っているのかもしれない。言い終え、しばらく沈黙の後、
「主人、そろそろ食堂へ向かわないとごまが飢え死にしかねません。急ぎましょう。」
「え・・ああああ!!本当だ〜急ごう!行くよ式夜、狩月。」
勢い良くドアを開け走り去っていく。式夜、狩月を置き去りにして・・・
後ろ姿を見送った式夜はいつも通りだと、表情を崩す。狩月を見た顔は無表情に戻っていた。
「行くぞ。」
そう呟きドアを開け歩き出そうとすが、思い出したように立ち止まり、
「さっきは悪かった。お前が主人を泣かせたと思って・・すまなかった。」
戸惑ったように謝罪を口にする。
「気にしなくていい・・とは言えないけど、まぁいいよ。良い話も聞けたから。」
「そうか・・あまり他人にその話をするなよ。わかったな?」
そう言うと返事も聞かずスタスタと歩いていく。
慌てて後に続く狩月
「食堂って何処なんだよ〜〜」
そう叫びながら・・
少し場所が動く・・
〔守護騎士専用墓地〕
「姉さん・・私は・・教会の人間も許せないし・・守護騎士も許せない。あの時、命令に従っていなかった姉さんが悪いのかもしれない、けど・・守護騎士が全員で撃退にあたっていれば・・そう思えてしょうがないんだ。姉さん・・ごめんなさい、許してくれないだろうけど・・私は・・私は・・あいつを殺す・・絶対に。」
静かに・・静かにそう誓う。
姉と同じ蒼く長い髪が風に流れ、手に持った槍が月光に煌いていた。
「もう、ここには来れそうに無い。姉さん・・さようなら。」
瞳にある迷いはまだ揺れている。思いを振り切るかのように・・街へと戻って行く。彼女が祈っていた墓石には、「ロア・アーキルス」そう彫り込まれていた。
彼女が去ったのを・・誓いを・・見ていたのは月と墓石、そして昏い闇を纏った者だけだった。
悲しむかのように、風が啼いていた。
「・・・・また、血が流れるのか・・」
くっくっくっく・・と暗鬱で泣き叫ぶような声が闇へ虚ろに響いて消えていった。

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