《MUMEI》

 目を見開き、苦悶の表情に歪んだ顔の中央がぱっくりと割れている。
そこからどす黒い液体と何かよくわからない物が流れ出ているのが見えた。
ユウゴは視線を前方へ戻して地面を蹴る足に力を入れた。
すぐに角を曲がり、目に止まった家の門を飛び越える。
そして玄関前に停められた車の後ろに身を隠した。

 夜の静かな住宅街に足音が響く。
そしてすぐ近くでピタリと止まった。
何やら相談しているようだ。
ボソボソと声が聞こえたかと思うと、足音は二つに別れた。
こちらに向かってくるのは二つの足音。
走るわけではなく、コツコツとゆっくり歩いて来ている。
ユウゴは体を車にピタリとつけ、できるだけ静かに、大きく息をする。
足音はゆっくりと近づき、やがてユウゴの隠れている車の前を通り過ぎていった。
 ユウゴは相手の姿を確認しようと、地面に伏せるようにして車の後ろから顔だけを覗かせる。
視線を向けた先には、ちょうど外灯に照らされた二人の男の姿があった。
彼らが着ているのは、追撃隊の制服ではない。
歳もまだ若い。
ユウゴと同年代くらいだろう。
それぞれ色の違うダウンジャケットを着た若い男たちは辺りを見回しながら歩いていた。
この位置からでは塀が邪魔で肩から下は見えないが、二人の横顔から見えるその目は異様だった。

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