《MUMEI》 春風「わぁ、見てっ。ほらっ」 次第に春が近付いてきたこの日── 「ほら、こっちにもあるよっ」 アンリ様と庭園を回っていた時の事です。 「いつ咲くのかな──」 アンリ様は蕾を見つめては、そう毎日のように仰っています。 風は次第に暖くなってきたのですが、なかなか花が咲かない事を、この御方は気にかけて居られるようです。 「まだかな──‥」 「もう少し暖くなれば開くと思いますよ」 「うん──」 そう仰られるアンリ様は、何だか御元気が無いようで──‥僕は心配せずにはいられません。 前へ |次へ |
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