《MUMEI》

 赤々と燃えるそれを見つめたまま、雛菊は身動ぎすら出来ない。

「‥‥‥‥‥‥‥」 
だが我に返ると、すぐさま草助に駆け寄る。

「おいっ、起きろっ」

「‥ん‥、何だよ‥朝か‥?」

「逃げろっ」

「ぇ‥?」

「逃げるのだ。火に飲まれる前に‥!」

「落ち着けって。今逃げ出そうったって──」

「ならばどう‥」

「縄垂らしてやっから──それ伝って先に下降りてな」

「ばっ‥馬鹿者っ!」

「‥!?」

「お前はどうするのだっ」

「俺は後から──」

「呑気な事を言っている場合か!? それではお前が‥」

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