《MUMEI》

「大丈夫だって、俺はそう簡単にはくたばんねぇからさ」

「何を馬鹿な‥っ、ごほっ」

「意地張ってっと──お前の方がくたばっちまうぜ?」

「‥お前を置いて逃げるなど出来ぬ」

「おいおい、まだ言うかぁ‥?」

「お前は恩人だっ。そのお前を‥置いて逃げるなど出来るものかっ」

 自分でも驚くような剣幕で捲し立てた雛菊は、煙を吸い込んだが為に再び激しく噎せた。

「華郎」

「‥何だ‥」

「頼む、言う通りにしてくれ」

「草‥‥‥す‥」

 それ以上言葉が続かない雛菊に、草助は縄を縛り付ける。

そして開け放った格子から、余った縄を垂らした。

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