《MUMEI》

「いやー、参った参ったぁ。思ってたより酷くてさぁ、でもまぁ、何とかこうして──」

 戻って来れて良かった、そう言おうとしたのだが、草助の言葉はそこで遮られた。


 雛菊が、しがみついて来たからだ。

「馬鹿者‥っ。心配したのだぞ‥!」

「わりい、でもさ、俺は──」

「拙者がどれ程‥っ」

 あまりに雛菊が言い続ける為、草助は苦笑を漏らさずにはいられない。

「ごめんな、心配かけちまって──」

 わしゃわしゃと、頭を撫でてやりながら、若人はふと後ろを振り返る。

 燃え上がる炎が、一際赤々として見えた。

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