《MUMEI》

「アンリ様──」

「ん‥?」

「大──」

「大丈夫だよ、心配しないで」

「薔薇の方も──御覧になりますか」

「うんっ」

弾むように仰って、アンリ様は僕を促されました。

その瞬間──‥

「!?」

何やら物凄い風が。

「びっくりした‥」

「大丈夫ですか‥?」
「うん‥」

「恐らく今のは──春の前触れなのでは無いでしょうか」

そう言うと、アンリ様はきょとんとされました。

「春の──‥前触れ‥?」

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