《MUMEI》

「はい、そんな気がします」

「そっかぁ、じゃあもうすぐだねっ」

アンリ様が兎のように跳ねられる度に、緩やかなウェーブのかかった金髪が、ふわりふわりと揺れて、甘い香りが振り撒かれます。

「楽しみだね」

「──はい」

薔薇園に着くと、いつものようにベンチに御掛けになるアンリ様。

「蕾──膨らんできてるね」

「そうですね」

「‥ねぇ、リュート──」

「如何なされました‥?」

「ううん、ちょっと前の事を思い出して──」

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