《MUMEI》

俺は不安だった。


昨日、俺の電話を受けて、
賢ちゃんが颯ちゃんの家に行ったらしい。


その時の颯ちゃんの様子を電話で知らせてくれた。


賢ちゃんは、その時の颯ちゃんを見て、
愕然と肩を落としていた。


「ごめん蓮翔ちゃん。」


「ん?何かあったのか?」


「ダメやった。」


「?な、何が?」


「颯ちゃんの力になれへんかった。」


「……颯ちゃんの家に行ったのか?」


「ああ。」


「ど…うだった?
やっぱおかしかったろ?」


「うん。
自分のこと“人間やない”言うてた。」


「え……。」


「俺見て“お前は人間だから俺と違う”って。

俺、もう颯ちゃんに近寄れんくなった。」


「え……え?
ちょ、どう言う意味?」


「颯ちゃんは……自分のこと人間や……ない思うてるんや。」


賢ちゃんの声は震えていた。


泣いているのだろう。


俺は、賢ちゃんの泣いている姿など、
見たこともなかった。


だからいつものように、
賢ちゃんの悪ふざけかと思ったんだ。


「じょ、冗談抜かすなよ。」

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