《MUMEI》

「なっ‥私が女だからといって見縊るで無いっ」

「ぅおいっ、だから女とか私とか言うなって‥!」

「!!」

 万が一、聞かれていないとも限らない。

 雛菊は陰から頭をだしてきょろきょろと左右を確認すると、草助に向き直る。

「良いか、私が女で、雛菊という名前である事は‥断じて皆の前では口にするで無いぞ」

「ぁ、ぁぁ‥」

 あまりに雛菊が念を押すものだから、草助はすっかりたじろいでいる。

「んじゃ、あとにかく行くか」

「散歩にでも行くような言い方だな‥」

 半ば呆れ顔で、雛菊は歩き出した。

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