《MUMEI》

僕は、この御方とは正反対。

闇色の髪‥赤く変わる目‥鋭い牙‥。

ですがこの御方は、僕を恐ろしいと仰る事はありませんでした。

人間からは常に恐れられてばかりいた僕にとって、この御方は本当に天使のような存在。

「アンリ様──」

「‥?」

「──有り難うございます」

「ぇ‥、どうしたの‥?」

アンリ様はきょとんとして瞬きをされました。

「リュート‥?」

「ぁ‥‥しつこいですよね」

苦笑する僕に、アンリ様はクスリとされました。

「ううん、リュートって律義なんだなぁって」

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