《MUMEI》

 まだ明け方までは時がある。

 とはいえ、のんびりとしてはいられない。

 草助は雛菊に袖を引かれつつ、しきりに欠伸ばかりしている。

「だらしが無いぞ」

「お前は眠くねぇのか‥?」

「こんな時にそのような事を考えていられるかっ」

「───────」

「こら寝るなっ」

「‥!?」

 雛菊の声で、垂れていた頭を擡げる草助。

「‥眠‥」

「‥お前は本当に武士なのか‥?」

 雛菊は時折疑わしくなるようだ。

 剣術は確かなものの、彼からはまるで威厳が感じられないのである。

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