《MUMEI》
言えない 〈私〉
椎名くんから、電話が来た。


それだけで、心が弾む。



「も、もしもし!!」



―…声に力が入ってしまう。



『おう、あのさ』



―…たったひとことなのに、『私』の声なのに…


すごく、緊張してしまう。



「うん!!」


『…さっき、病院から電話あったんだよ』



椎名くんによると、
担当の先生がネコの情報を伝えてくれたらしい。


…椎名くん、先生に訊いてくれてたんだ…


明日、病院に行くという約束をすると、
椎名くんは電話を切ろうとした。



―…私、言わなきゃいけないことがある。



「―…あ、あの…」



引き止めると、



『うん??』



優しい、返事。



「…あのー…」


『なに、どした??』


「―……なんでも、ない!ごめんね、じゃあね!!」


『おい…??』



一方的に切ってしまった。



―…だめだ、言えないよ…



『祥ちゃんが、椎名くんを好きかもしれない』



なんて、



言えないよ―…

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