《MUMEI》
▽
「やっぱり惇は何作っても美味いな、あ〜最高」
「ただのお好み焼きだろ…いちいちおだてんな、まったく…まさか昼飯やらされるとは思わなかったし」
廃残の様なくたびれた野菜から復活させたお好み焼き。
まあまあかなと思いながら箸を運ぶ。
窓から平和に西日が射す。
薄ら埃の被ったテレビにはいい〇もが映る。
裕斗は相変わらず黒烏龍茶飲みながら本当に美味しそうにお好み焼き食べてる。
「何でここ4時に出んだよ…、収録11時からでさ」
「うん、実はさ、同じスタジオで秀幸がドラマ撮っててさ!その時間頃に秀幸のシーン終わるだろうから近くのカラオケで飯食うんだ」
「は〜…また伊藤さんか…、まったく裕斗はとことん伊藤さんにべったりだなあ!つか…カラオケBoxで飯かよ…」
「へへ、…俺秀幸にめちゃめちゃ惚れてっから…、ま、でも向こうの方が俺にめろめろだけど?
悪いな、惇にいろいろ聞きたかったから嘘ついたんだ、好きだとか秀幸と別れるとかみんな嘘だから!」
「クソ…途中からそんなん気づいてたし、…つかあらためて言われっとなんか腹立つなあ、計算高い極悪商人め」
とか言い返しながらもニコニコ笑う裕斗に本当は…
俺は塵一つ腹なんかたっちゃいない。
俺を心配してくれてこその嘘だって、それも同時に分かっていたから。
敵わない、全くもって…。
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