《MUMEI》
LAST4
今日ボクは白い便箋に向かった。

何日も何日も ずっと頭の中で考えてきた。

考えながら何回も涙が流れた。

ボクが犯した三度目の罪の恐ろしさ。

死ぬほどの後悔。

家族へどうしても伝えておきたい事。

今までの感謝の気持ち。

それから…それから…。

たくさん
書きたい事はあるけど
いざ書こうと思うと
なかなか進まない。

書いてて涙が溢れ出す。

ポロポロ ポロポロ
涙が出て
字が見えなくなる。

何度も 涙を拭いて便箋に向かう。

そのうちにティッシュの山ができてしまった。

ボクは 思う事を書いた。
幸せを壊したボク…。

ボクのこの手紙を
家族が読んだら
もう今の家族との
生活・関係は戻せなくなるだろう。

こんなに こんなに
幸せなのに
その事に気づかず
三度も罪を犯したボク…。

ほんとにバカだ。

今頃わかるなんて遅すぎる。

書き終わった。

読み返して少しつけ加えた。

それからボクはしばらく何もできなかった…。

まるでボクの心が便箋の中に入ってしまったみたいだ。

真っ白だ。

これで ひとつ
ボクの最期に向けての
準備が終わった。

ボクが書いた
最初で最期の『遺書』になるであろう手紙。

30歳代でボクが『遺書』を書く事になるなんて。

思い起こせば…

希望の高校に入り

希望の会社に就職して

好きな人と結婚

家族が増えて…

幸せな人生を歩んできたのに…。

ボクが幼い時はいろいろ家庭に問題があった。

決して普通の家庭ではなかった。

ボクは父親が怖かった。

酒を飲むとからむ父親。

父親が大声で話すだけで怖かった。

ボクは酒が飲めない。

だから 飲み会は嫌いだ。
酔って
普段と違う人を見ると
ボクは怖くなった。

それは 今でもずっと続いている。

幼い頃の経験は 何か影響があるのだろうか…。

今さら そんな事を考えても遅いけど…。

今日も ボクは泣いた。

今日は ひどく疲れた。

何かの達成感なのだろうか…。
身体がだるい。

毎夜 みる夢。

今夜もみるのだろうか。

ボクがぐっすり眠れるのは
『最期』を迎えてからだと思う。

そう思いながら
ボクは今日も眠りについた。

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