《MUMEI》

「猫……。」
正平はその場にへたり込んだ。 猫は奥に消えていく

正平は枯れ葉の温かさに身を寄せて穴を掘る。
爪に土が混入して痛い。
黒いものが見えた、昌の学生服の袖だ。引っ張り上げる、学生服だけが掘り起こされた。




「正平何処に行ってたの!」母が公園を出てすぐの小道から走って来た。
「あんたまでいなくなったら……」
正平の手を握った。

「兄ちゃんに会えなかった」脇に抱えた学生服が懐かしい森の匂いを馨していて、正平は涙が出ないように固く目を閉じた。

が、正平はホッとした。
昌に会えても連れ戻せる自信はなかったからだ。

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