《MUMEI》

「冗談やない。」


「え……。」


いつもなら“俺が冗談言ってるように見えるかっ!”
なんてふざけた声挙げるのに。


賢ちゃんの声は弱々しかった。


その声に嫌でも現実を突き付けられる。


「いいか、蓮翔ちゃん。

颯ちゃんの前では涙見せるんあかんぞ?」


「……は?」


「俺、それで近寄れんくなったけんな。

あ、それと怪我すんのもあかんで?」


「え?何?
どう言う意味??」


「すまん。
俺、颯ちゃんに人間ってなんや聞かれて、
人間は涙流したり、
血流したり、
痛みが分かるんや〜言うてしもうたん。」


賢ちゃんは更に声のトーンを落としてこう言った。


「それで……俺が泣いてしもうたんを、
颯ちゃんは俺のこと人間や言うて……
追い出された。」


「賢ちゃんが?!」


「うん。
だからな、お前は颯ちゃんの前で、
血流したらあかんねん。

泣いてるとこ見せんのもあかんのや。」


「どうして……。」


脳が、体全体が、今の状況を全否定していた。

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