《MUMEI》

2階の廊下に、その御方は居られました。

「───────」

懸命に、指輪を捜してらっしゃいます。

何と御声を掛けようか迷っていると、

「リュート‥?」

アンリ様が気付かれたようです──。

「リュート、どうしたの?」

「‥申し訳ございません、如何なされて居られるかと思いまして──」

「私なら大丈夫だよ、心配しないで」

「‥はい、では‥、仕事をして居りますので、何かございましたら──御声を掛けて下さいませ」

僕はそう言って、一旦その場を離れる事にしました。

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