《MUMEI》

指輪が無くなってしまったのは、ただそれが大きかったが為。

あの御方は何も悪くはないのに──。

「‥ぁ」

砂時計を置いたままでしたね──‥。

逆さまにすると、再びさらさらと零れ落ちる砂。

「───────」

アンリ様が譲って下さった砂時計──‥本当に素敵です。

アンリ様もこのように‥砂を御覧になってらっしゃったのでしょうか──。

あの御方の御姿を想像して、つい微笑ましく思ってしまいました。

「リュート、あったよ!」

「──ぇ──」

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