《MUMEI》 チェーンの金具を止めて差し上げると──、アンリ様は鏡を御覧になって嬉しそうにされました。 「これでもうなくさないよね」 「はい、素敵なアイディアですね──」 「このチェーン、前にね、お祖母様に貰ったの」 「そうなんですか──」 「うん、それで──指輪を通したら丁度いいかも、って思って」 「よくお似合いでございますよ、アンリ様」 僕がそう言うと、アンリ様はちょっぴり頬を染めました。 「ありがとう」 「──御部屋に御戻りになりますか」 「広間にいてもいい?」 「はい、勿論です」 前へ |次へ |
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