《MUMEI》

「──ぁ、砂時計見てたんだ」

「はい、珍しいもので──」

「ふふっ、気に入って貰えて良かった」

とても嬉しそうにその御方が仰るので、僕まで嬉しくなってしまいます。

「ぁ‥」

「如何なされました‥?」

「蕾、開いてるよっ」

「──?」

示された方を見ると、昨日まで蕾だった薔薇が、半分ほど開いています。

「ね、行ってみよう?」

「庭園に──ですか?」

「うんっ」

「──畏まりました」

ようやく──約束が果たせそうです。

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