《MUMEI》

庭園をひと回りしている途中──蝶が舞っているのを御覧になって、アンリ様は嬉しそうにしてらっしゃいました。

花に止まっている蝶を見つめて目を細めて居られる御姿を少し離れた所から、僕は見守っていました。

「リュートもおいで」

「アンリ様‥?」

蝶が──逃げてしまわないでしょうか‥。

「大丈夫だよ、ほら──」

アンリ様は僕の手を引いて、元いらした場所に向かわれました。

「綺麗だよね」

「そうですね──」

この庭園には、蝶の他にも──小鳥や小動物が集まって来るのだそうです。

素敵ですよね──。

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