《MUMEI》

「───────」

「開けてみねぇのか?」

「後でな」

「今開けてもいいのになぁ‥」

「何故急かすのだ‥?」

「いや、別に急かしちゃいねぇけど‥」

「なら何故そう何度も言うのだ‥?」

「何となく──せっかくだからさ」

「今は人目がある。どうしても開けてみろと言うのなら──何処か死角に入る他あるまい」

 雛菊が言うと、草助は納得したらしく、彼女を引っ張って角を曲がる。

「ここなら大丈夫だろ?」

「うむ‥」

 何故そこまでして急かすのだろう、と雛菊は不可解で仕方がない。

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