《MUMEI》
櫻(蒼視点)
「何だよ」


さっきまで俺に見とれていたくせに


今は、まるで化物を見たように震えている櫻


つーか化物はそっちだろうに


「ああああ蒼様」


様を付けろと言ったらあっさり頷いた櫻


「何?」

「あ、あ、穴…」


穴?


「こ、ここ、こ…」


櫻の白い指が、俺の耳に触れた。


…冷たくないな。


むしろ、あったかい。


目の前にいる櫻は、九十九の描いた絵そのもの


桜色の着物


長く美しい黒髪


白い肌


大きな瞳


桜色の唇


華奢な体


胸は無さそうだが、文句無しの美少女


今、その少女


櫻は、俺に震えながら触れていた。


その瞳は、何故か潤んでいて、今にも泣きそうだった。


「どうした?」


あぁ、俺やっぱり美人に弱いな


無意識に、口調が優しくなっていた。


「耳に、穴が! こんな、酷い事… 一体…誰が、こんな…っ」


櫻は泣きながら怒っていた。

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