《MUMEI》 「なあ、賢ちゃん…。」 「ん?」 「嘘ついたな!」 「へ?」 颯ちゃんと登校してからしばし空いた時間を利用して、 賢ちゃんに電話していた。 勿論、人の目を忍んで。 メディアで大々的に俺のことが知らされてから、 ますます周りからの目が気になってきた。 ストレートにサインだの、握手だの申し出て来る奴も増えたのだ。 だから、余り人通りの少ない非常階段へ来ていた。 「俺がいつ蓮翔ちゃんに嘘ついた?」 「昨日!」 「へ?」 賢ちゃんは全く自覚してないようだ。 俺はハァ…とため息をつくと、 「颯ちゃんいつもどうりだったぜ?」 責めるようにそう言った。 「そうか……良かった。」 「……は?」 予想外の反応に戸惑ってしまった。 いつもの賢ちゃんなら、 嘘がバレた途端に “バレてもうたー” ってバカ笑いするのに。 怒る気力も失せてしまった。 前へ |次へ |
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