《MUMEI》
妹弟子
『おめでとう』と言う俺達に対し、何度も『ありがとう』と言いながら守は席に戻っていった。


(よっぽど嬉しいんだな)


授業が始まってもニヤニヤしている守は正直少し気持ち悪かったが


(仕方ないよな)


俺の気持ちは先ほどの真司と拓磨と同じだった。


それは志貴や


注意して理由を聞いた教師までも同じようで


『仕方ない』


クラスの心が一つになった


そんな、午後だった。



そして、放課後。


少し落ち着いた守が俺の元へやってきた。


「ごめんな、祐也。俺、サッカー部期待の星になってしまったんだよ」


(そこまでじゃないだろ)


そんな気持ちはもちろん口にも顔にも出さず


「残念だよ。着物指導頼んだのに」


俺は、そう言って笑った。

「大丈夫だ! ちゃんと俺の妹弟子に頼んでおいたから!」

「妹? お前、一人っ子だよな?」

「血は繋がってないけど、妹みたいな子がこの学校にいるんだよ!」

「へぇ…誰?」


何気なく訊いた俺は、その時切実に思った。


(守『は』信用できるけど…

その子、信用出来んのか?)


それは、俺も知っているある女子生徒だった。

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