《MUMEI》

「なあ、七生ってどんな人?会った方がいい?」

乙矢に聞くのが適当だと思った。


「……勉強すれば?そろそろ詰めていかないと痛いめを見るぞ?」

返しは素っ気ないものだ。


「俺もまだ会わない方がいいと思うよ、二郎君は望んで忘れたかもしれない。

準備期間だと思って肩の力抜いてさ、今を生活していくべきじゃないかな。」

確かに、突然抜け落ちた記憶を取り戻さなければならないと強迫観念にも似た意地を張っていた。
今の俺には七生を思い出さなければならないという理由は無い。

七生の存在が俺にとってどんなものであったかも分からないからだ。

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