貴方の中の小悪魔
を知る神秘の占い

《MUMEI》
さくらのころ。
わたしは希望の大学に見事落ちた。

かろうじて、滑り止めのそのまた滑り止めの大学にだけ合格してはいたけれど。

行く気になんてさらさらなれなくて。



咲き誇る桜を、ちょっと疎ましく思いながら、家の前を真っ直ぐ伸びる道を歩く。

駅まで7分半。




こんな朝っぱらから出かけようなんて、なんで思ったか分からない。

入学したての学生なんて、一番見たくないのに。





父と母に云わせれば、わたしは『負け犬』らしい。

一年でも浪人したら、どんな一流大学に通っても、全く意味がないのだ、と。


わたしは頭を下げて、ただ耐えるしかなかった。



「見合いでもして、さっさと家庭に入れば?」

思春期と反抗期のど真ん中に居る弟にも、こんな風に云われる始末。


同意しかけた母に、わたしはその日初めて口を開き、父から怒鳴られた。




今までが上手く行き過ぎてたんだよ。

お金じゃどうにもならないことも、あるんだよ。







動き出した電車の窓に、桜の花びらが張り付いて居た。

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