《MUMEI》

(何だと‥)

 おかしい。

 隙を突いた筈だった。

 だが、刃は防がれた。

 あの男が居ないせいか、将又、己の力が足りないか。

(草助‥‥‥)

「‥!?」

 再び刃が降り下ろされた。

(間に合わぬ‥っ)

 キィン、と刃の鳴る音がしたのはその刹那。

「な‥‥っ」

 その刀に、見覚えがあった。

 あの夜、己を救った刃だ。

「わりい、遅れちまったな‥」

「──草‥‥‥助‥」

 雛菊は目を円くし、ただ名を呼ぶ事しか出来ない。

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