《MUMEI》 果樹園をひと巡りして、再びアーチの前に戻って来ました。 「御疲れになりましたか‥?」 「うん‥、ちょっとだけ。こんなに歩いたの久し振り──」 アンリ様は空を見上げて、嬉しそうに仰いました。 桜桃の木に寄り掛かるようにされながら、木洩れ日に手を翳して居られます。 「リュートもこっちに来ない?」 「僕も──ですか?」 「来て欲しいな」 「──はい。そう仰られるのであれば、喜んで」 アンリ様の隣りに立つと、丁度奥に生えている木苺の木が目にとまりました。 前へ |次へ |
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