《MUMEI》

放課後。


とうとうこの時がやってきた。


あの賢ちゃんとの電話以来、
颯ちゃんと会話するのに躊躇(タメラ)われて中々話し掛けられずにいた。


とうとうラストチャンス。


意を決して校門の前で立っていた。


相変わらず俺に群がる生徒達を無視して。


しばらく経つと……。


ようやく颯ちゃんが校舎から出てきた。


颯ちゃんは練習に向かおうとしていたのか、
少し小走りで駆けていた。


俺にも気付かずに、
門を潜ろうとする。


「颯ちゃん!」


俺は慌てて声をかけた。


「ん?…あ、蓮翔ちゃん?」


ようやくといった感じで、俺に気付いたようだ。


「何?ちょっと今忙いでんだけど。」


「わりぃ!
ちょっと話しがあってよ!」


そう言って、
颯ちゃんと並んで走った。


「ん?話し?」


「うん……昨日のこと。」


「昨日のこと?」


「ああ……。」


心臓が口から飛び出してしまうのではないかと思う程、
もの凄く緊張していた。

きっと試合以上の緊張感だな。


俺はゴクリと唾を飲み込んだ。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫