《MUMEI》

「昨日……賢ちゃんと会ったろ?」


すると、颯ちゃんは途端に顔をしかめた。


「知らねぇ。」


「え?」


「そんな奴しらねぇよ。」


会ったんだ……。


「あの…賢ちゃんと何話し……」


「だから知らねぇって言ってるだろ!」


「でも俺……。」


颯ちゃんは複雑そうに笑うと、


「いいよ……。

俺に構わなくて。」


そう言って今度は寂しそうに笑った。


「アイツ、人間だったんだ。」


「賢ちゃん……のこと?」


「ああ……。

でも、俺等はちげーよな。」


「?」


「俺等は特別だよな。」

颯ちゃん……。


頭を打たれた気分だった。


「颯ちゃん……賢ちゃんは人間だ。」


「ああ。」


「俺達も人間だよ。」


その言葉に、
颯ちゃんは突然速める足を止めた。


「お前まで………蓮翔ちゃんまでそんなこと言うのか!?」


颯ちゃんは今までにない、
とても怖い顔をしていた。


俺は、それ以上何も言えなくて……。


ずっと俯くしかなかった。

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