《MUMEI》

「リュート──」

「‥?」

囁く声が降ってきて、僕は目を開けました。

「アンリ‥様‥?」

「ごめんね、起こしちゃって‥」

「いえ、滅相もございません」

「ありがとう」

「?」

「連れて来てくれたんでしょ?」

「はい──、ですが‥」

どうやらアンリ様を見つめている内に眠り込んでしまっていたようです──。

「申し訳ございません、ついうっかり──」

クスリ、と笑い声がしたのはその時でした。

「謝らないで。私が先に寝ちゃったんだし──。ね?」

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