《MUMEI》
愛を知らぬ
「……待て」

咄嗟に、昭一郎の腕を掴んでいた。


「……狸寝入りか」

落ち着いた返しだ。


「俺のこと憎かったくせにどうして気を持たせるようなこと出来るんだよ、信じられないな……俺がそういうのに弱いのを知っててわざとしているのか?俺が昭一郎のこと……」


「……俺が、何?」

昭一郎は淡々と俺に問い掛けた。


「……会いたくなかった。それと同じくらい会いたかった。
――――帰れ、今日俺とお前は会わなかった!
昔の友達と居酒屋で朝まで飲んでいたって奥さんには言っておけ!」

腕を離してやるからさっさといなくなれ!




「眞知子とは離婚した。子供も眞知子と暮らしていて今は俺も実家を出て一人で暮らしている。」


「…………」

言葉が見つからない。

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