《MUMEI》

(‥馬鹿者め‥)

 雛菊は、きりきりと胸が痛むのを堪えるだけで必死だった。

(何故自分を守ろうとせぬ‥。何故私ばかりを守ろうとする‥)

 見上げた空が、歪む。

 涙で視界がぼやけてくるのを気にも留めず、雛菊はただ上を見ていた。

(あのような怪我をして‥にも関わらず私を‥)

 ふと彼女の脳裏に蘇ったのは、あの日の事。

 そして思う。

 強くなるのだ、と。

 足元の枝を拾い上げると、雛菊はそれを構えた。

 そしてそれを、黙々と竹刀のように振っていた。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫