《MUMEI》

 一方、草助はといえば、

「───────」

彼はすっかり気落ちして、腕に巻かれた布を見つめていた。

(あいつ‥何だってあんなに──)

『何故お前はいつも‥‥‥いつも己の事を気に掛けぬ‥!』

(俺は大丈夫だって言ってんのになぁ‥)

 痛むものの、彼にとってこの傷はさほど大した事ではない。

 だが、あの姫は自分を気に掛けている。

 何故自分の事を守らないのか、と。

(──あいつ‥まだ怒ってんのかなぁ)

 ただ、静寂ばかりが流れてゆく。

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