《MUMEI》

やっとの事で追い付くと、アンリ様は既にバスケットを一杯にして居られました。

「こちらにも沢山生っているんですね──」

「うん、ほらっ──こんなに」

「まだ向こうにもありますね──」

ですがあまり奥まで行ってしまうと危険かも知れません。

「リュート、向こうはどうしようか?」

「バスケットも一杯になりましたし──、一度戻りましょうか」

「うん──、そうだね」

木苺のバスケットを両腕に抱くように抱えてらっしゃる御姿を、いつにも増して愛らしく思いました。

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